ダイヤモンド半導体の妄想シナリオ

パワー半導体は文字通り出力に関わる分野で使われている半導体で電力や電源、モーターの制御など用途は多様です。

例えばモーターの回転数を制御する分野で使われています。

モーターを使う冷蔵庫、洗濯機・乾燥機、エアコン、掃除機・掃除ロボットなど、殆どの家電に組み込まれています。

出力を制御するので炊飯器やIHクッキングヒーター、オーブンレンジ、家庭用太陽光発電の制御装置にも使われています。

パワー半導体で注目されているのがモーターで駆動する電気自動車(EV)用途です。

EVの走行性能はモーターの性能に依存しますが、モーターの性能を引き出すのがパワー半導体です。

現在のケイ素を使った半導体は発熱が激しく、データーセンターでは冷却のための設備と消費電力に多額の費用をかけています。

パワー半導体はコンピュータ以上に高電力のもとで動作するので発熱は更に激しく、高温化での動作の不安定さがケイ素を使ったパワー半導体の性能を制限しています。

夏場にPCの熱暴走が話題になりますが、これが高温化での不安定な動作の実際です。

ダイヤモンド半導体はケイ素の半導体よりも耐熱性が高く、より高出力のパワー半導体を製造できると期待されている素子です。

今般、佐賀大学の嘉数教授の研究室が課題を一つ克服し、実用化に近づく成果を上げたとメディアが報道しました。

半導体に使うダイヤモンドは合成品で、工業用ダイヤモンドとして使われます。

工業用ダイヤモンドの用途として多いのは切削材や研磨剤です。

合成ダイヤモンドは宝飾品用にも製造され、指輪やブローチを飾るダイヤモンドとしても浸透しています。

その品質は天然ダイヤモンドと遜色ないとされ、素人では区別がつかず、業者でも特殊な判別装置を使うと言われています。

ダイヤモンドは炭素原子だけからなるので、ケイ素から作る半導体と同様に不純物を加えて半導体化します。

仕様どおりに不純物を加えたダイヤモンドの大きな結晶を作ることも大変です。

前置きが長くなりました。

佐賀大学の成果をもって日本がダイヤモンド半導体で世界のトップに立てると期待するのは早計です。

合成ダイヤモンドの大産地は中国です。

「ダイヤモンド 中国」で検索してください。

他の産業と同様、合成ダイヤモンドも安価な汎用品は原価の安い中国に生産移転してしまったからです。

中国国内での技術開発は宝飾用ダイヤモンドでも世界的シェアを握るほどに発達しています。

私の妄想ですが、日本発のダイヤモンド半導体が実用化されても、日本では需要を満たすだけの量産体制を構築できず、産業政策を検討している間に中国にシェアを握られてしまうというものです。

今般の佐賀大学の成果は、ダイヤモンド半導体をあきらめた米国が再挑戦するきっかけになるでしょうが、中国が総力を挙げてキャッチアップし、独自の技術で量産体制を確立するでしょう。

 

こんな妄想が杞憂であればいいのですが。