セキュリティ・クリアランスを先取りして仕事に縁起

米国で21歳の州兵が仲間内で自慢したいために国家機密情報を漏洩した事件に鑑み、日本でもセキュリティ・クリアランス制度が前倒しで運用される可能性があります。

とはいっても日本版セキュリティ・クリアランス制度の具体的な内容は政府内の検討段階に過ぎず、公表の日程も明らかではありません。

秘密保護制度には既にサイバーセキュリティ協議会や特定秘密保護法があります。

どちらも国の秘密情報に関わる民間人も制度の対象者となりますが、セキュリティ・クリアランスでは民間が保有する秘密情報も経済安全保障の対象となり、それに関わる民間人も制度の対象者となります。

セキュリティ・クリアランスとは秘密情報にアクセスできる資格(権限)を国が認定する制度です。

秘密情報にアクセスする権限が認められるには、秘密保持に関する研修を修了する他に、本人の適性や身上調査が行われ、情報漏洩の危険性(可能性)が評価されます。

例えば隠れ借金はリスク評価で多分失格でしょう。

この調査は本人に限らず家族、近い親族にも及びます。

人間関係では例えば暴力団などとのつながり、親族に限らず交友関係にも及びます。

セキュリティ・クリアランスの認定は定期的に再評価されます。

国が民間人にここまで管理するのかと思われますが、経済安全保障を推進するうえで民間の秘匿情報であっても国家秘密同様に厳重に扱うための制度です。

経済安全保障推進法は特定重要物資を定めていますが、その事業に関わる秘匿情報に携わる民間人はセキュリティ・クリアランスの対象になると予想されます。

特定重要物資には、永久磁石、工作機械と産業用ロボット、航空機部品、半導体、蓄電池、基盤クラウドプログラム、重要鉱物、可燃性天然ガスを掲げています。

民間企業と民間人にとって経済安保の名のもとにセキュリティ・クリアランスを要求され窮屈に感じますが、セキュリティ・クリアランスの認定は他国の企業との取引における前提条件となることが考えられます。

民間企業同士で技術提携や資本参加、M&Aを締結しても、セキュリティ・クリアランスのホルダーでなければ秘匿情報へのアクセスは相手国政府が認めないことが考えられます。

セキュリティ・クリアランスのホルダーはこのような分野で重宝されるでしょう。

特定重要物資の産業に携わる中小企業もセキュリティ・クリアランスの対策を意識することで、仕事を守り、事業を拡大できそうで縁起のいいことです。